たかが便秘、されど便秘で、小さなお子さまの場合はご両親の悩みの種になることが少なくない病気ですね。
どこからが病気?
哺乳時期のお子さまは1日1〜2回うんちが出るのが普通ですが、たまに1日2日出ない日があっても大丈夫です。離乳期以降も1日1回が理想的ですが、1日おきでも確実に出ていれば良いし、たまに2〜3日あいても気にする必要はありません。かぜ薬(特に咳止め)を飲んでいる時には便秘になりやすいものですが、通常は薬を飲まなくなれば元のペースにもどります。これは「たまに」なら間があいても良いということであって、3〜4日に1回が普通という場合には受診が必要です。治療が必要な便秘体質であったり、栄養に問題があったり、他の病気が隠れている可能性があるからです。
生まれて初めて胎便が出たのはいつかご存知ですか?
2000g以上で生まれた赤ちゃんは24時間以内に初めての便が出るのが普通です。24時間以上経ってから出ても問題ないことも少なくないのですが、何らかの病気(腸の神経が一部なくて手術が必要なヒルシュスプルング病など)が隠れている可能性があるので、一度は受診されることをお勧めします。
治療の原則
排便の習慣をつけることと、それを妨げる要因(硬く太い便で肛門が裂けて排便する時に痛む裂肛 “”切れ痔”” という病気が多い)を排除すること、習慣ができるまでの間に直腸が拡がり過ぎないようにすること、の3点が原則です。これさえ達成できれば、「飲み薬」でも「こより浣腸や坐薬や浣腸」でも「おばあちゃんの知恵」でも、どんな治療法でも良いのです。
哺乳時期の便秘にはまず糖類を追加してみる
含まれるオリゴ糖のおかげか、母乳を飲んでいるお子さまは便秘しにくいので、便秘の場合は母乳がよく出ているか、体重増加は良いかなどチェックが必要です。ミルク育ちのお子さまが便秘傾向の場合にはマルツエキス(麦芽糖)などの二糖類が使用されてきましたが、最近はオリゴ糖も簡単に手に入るので、このような糖類をミルクに足して飲ませてみることから始めるのが良いと思います。
離乳時期の便秘には繊維より水分を十分に摂ることの方が大切
離乳時期には腸が慣れていない食物繊維が入ってくる上、母乳やミルクから摂っていた糖分と水分が減って便が硬くなりやすいものです。便を硬くし過ぎないためには、麦茶や白湯などで水分を多くとることが有効です。効果てき面なのはジュースですが、将来の虫歯のことを考えるとお勧めはできませんので、一歩譲って乳児用スポーツドリンク程度に留めていただければと思います。水分の多い果物も有用です。牛乳は栄養面からは大切ですが、こと便に関してはかえって硬くしてしまうことが多いので、飲む量は個人差にあわせて調節していただければと思います。
病医院での治療
前述の方法がうまくいかない場合や、1歳過ぎのお子さまは受診していただくのが良いと思います。治療は便の量を増やしたり軟らかくする飲み薬(カマ・ラキソベロン・大建中湯などのお薬がよく使用されます)で治療する場合と、浣腸や坐薬で直接排便をうながす方法があります。どちらを使用するか、組み合わせて使用するのかなどは、お子さまの状態に合わせて考える必要がありますので、受診時によく説明をきかれると良いと思います。
放置した場合に起きることは?
最も衝撃的なのは、トイレで排便していたお子さまが突然失禁状態になることです。幼稚園や小学校で起きるので環境へのストレスのためと思われがちですが、多くは高度の便秘によるものです。自分では出せない太くて硬い便が肛門に入り込んで常に肛門が開いているので、その横を通れる大きさの便が本人の自覚なしに出てしまうもので、溢流性便失禁と呼ばれます。1歳頃には3〜4日毎に便が出ていたので問題ないと考えていたご両親が多く、3歳頃には1週間に1回になり、そのうち時々行う浣腸以外では便は出なくなった、というのが一般的な経過です。元凶は1歳頃の3〜4日に1回の便通で、便が貯まっている間に直腸が拡がってさらに貯められるようになり、中に硬く大きな便塊ができてしまうのです。下痢と便秘を繰り返すお子さまも、多くは同様の便秘の悪循環の結果です。治りますが、便を出し切るまでが大変ですし、その後年単位の管理が必要になります。成人してから2週間から1月に1回しか便が出ないと受診されても、その巨大な直腸に関しては殆どお手上げ状態です。便秘と大腸がんの関係も言われておりますし、お子さまが小さいうちに早期に手をうっておくことが重要と考えられます。一方、思わず救急車を呼んでしまうような突然の強い腹痛の8割前後は単なる便秘です。症状は激烈ですが、排便習慣が正常で直腸が拡がっていないところに急に便秘したための腹痛と考えられ、一度浣腸で貯まった便を出してしまえば、その後の治療にはあまり時間がかからないのが普通です。