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こんにちは。
北原LSC総合診療科の和田吉生(わだよしき)です。
桜がきれいな時期になってきました。
世間は物騒ですが、季節は変わらずめぐっていきます。
さて、前回私が書いた悪い予感が当たりそうです。
新型コロナウイルスが東京で感染爆発を起こしそうです。
ご存じの通り、昨晩、小池都知事が緊急の記者会見を開き、
東京が感染爆発の重大局面を迎えていることを改めて指摘し、
都民に対して今週末の外出自粛を要請しました。
都民にとっては…やりきれない状況かもしれませんが、
私からすると遅すぎたとも言える外出自粛要請です。
今夏のオリンピック開催を諦めていなかったという
政治的欲望が見え隠れしますが、本来はもっと早い段階で、
この要請が出されても何ら不思議ではありませんでした。
東京都からの感染者報告がここ数日増加しています。
PCR検査数が極端に増えたわけではないようですので、
検査の網にかかる患者さんが増えてきていると考えます。
つまり、水面下ではもうかなり感染が拡がっているはずです。
これはあくまで私の想像の域を出ない考察ですが、
一斉休校になった際、水面下で若者がクラスターを作った、
さらに中国含め外国からの感染輸入が阻止できていなかった、
この辺りが水面下で感染が拡がってしまった理由と考えます。
学校は休校になったが、高齢者の集会は続けられていたという
ニュースや報道もあちらこちらでちらほら見かけますね。
厳密には「三密空間」の回避は、徹底されていなかった。
一部では、検査を制限してきたつけだ!なんて声も聞こえますが、
国が検査を制限したから、感染が拡大しているわけではありません。
確かに日本は、お隣の韓国はじめ諸外国と比較しても、
PCR検査数は少ない状況のままでここまで来ています。
しかし、それこそ全国民に検査を徹底したとして得られるものは、
感染拡大の抑止ではなく、その時の感染状況の静止画にすぎません。
むしろ、検査が陰性なんだから私は大丈夫!という、
うすっぺらな安心と不要な油断や緩みを植え付けてしまい、
さらに、陽性者への差別を助長するだけかもしれません。
必要な心がけはやはり、自分はすでに感染しているかも、
あるいは、まわりの人も誰かはウイルスを持っているかも、
そう考えてできる予防策を徹底的に継続していくことです。
素敵な啓発ポスターがあるので、私も診察室で使わせて頂いてます。
![30d9a59b478b451facf0a2bccbbdb16e](https://ls.kitaharahosp.com/wp-content/uploads/2020/03/30d9a59b478b451facf0a2bccbbdb16e-jpg.webp)
ただ、検査を徹底して感染者数の正確な把握ができると、
実は、医療体制にとっては良いことも確かにあります。
それは“重症患者数の予測ができる”ことです。
いまこの瞬間にも、世界では大変な状況が起きています。
イタリアやスペインでは、重症患者の救命に必須となる
人工呼吸器が、各医療機関でどんどん足りなくなっており、
そうなると、救命の見込みの乏しい高齢者の人工呼吸器を、
若者の救命のために使用せざるを得ない状況が起きています。
これがどんなに悲惨なことか…想像に難くないでしょう。
見ず知らずの若者の命を救うために、
自分の大切な身内の人工呼吸器が外されてしまう…
みなさん、そんなことが想像できますか?耐えられますか?
でもそれが先進国で、いまこの瞬間、起きている現実です。
我々医療者にとっても、地獄以外のなにものでもありません。
もし東京で感染爆発が起きたら、当然、同じ現実が訪れます。
日本では、絶対にそんな悲惨なことを起こしてはいけない。
では、そのためにいま、わたしたちに何ができるか?
ひとつ、どこにどれだけの人工呼吸器が必要なのか分かれば、
そのために機器や人材を整える準備はできるかもしれません。
そのためには重症になりうる患者数の把握が必要ですし、
それを突き詰めると、全体の感染者数の把握が必要になります。
感染者全体の10~15%が人工呼吸器が必要な肺炎になるからです。
これは、これまで蓄積されたデータから分かる世界共通の事実です。
また、世界の医療機器メーカーが人工呼吸器の増産も始めています。
必要な場所に必要なだけの人工呼吸器を配置しようという動きです。
それでも、重症者が予想を上回って増えてしまったら…。
なので、わたしたちにできることは、極力感染者を増やさないこと。
もっと言うと、感染者の増え方をなるべくゆっくりにすること。
一定数の重症者が出てしまうのは、避けれられない現実ですが、
人工呼吸器が足りなくならない程度にゆっくり増えてくれれば、
ひとりひとりの救命率はあがり、結果的に死亡率は下がります。
いま国が都が、感染爆発を起こさせないように躍起になっているのは、
まさにこういった背景や理屈があるのです。
極力感染者を増やさないために、わたしたちにできること。
それは繰り返しになりますが、自分はすでに感染しているかも、
あるいは、まわりの人も誰かはウイルスを持っているかも、
そう考えてできる予防策を徹底的に継続していくこと、に尽きます。
まだまだこの戦いは、ながーくながーく続きます。
皆さん中距離走的なイメージを持っているかもしれませんが、
いやいや、これはマラソンです。しかもウルトラ級のマラソンです。
政府や有識者は、この点ももっと強調してほしいと思います。
そして何より、このウイルスの脅威と日々の営みとのバランスを、
いったいどこで取っていくべきなのか。
耐えて耐えて一辺倒では、本当に生活できない人々が溢れます。
かといってこれまで通りに経済を回そうと動き出せば、
間違いなく感染爆発が起きて、たくさんの人々の命が奪われます。
このままでは、どっちにしろ、悲惨な目に合う人が増える一方です。
このコロナ騒動は、現代社会の在り方そのものを我々に問うています。
いまこそ、人々が協力し合って知恵を出し合う時です。
中国がぁ、アメリカがぁ、なんて言っている場合ではないし、
自分さえよければぁなんて、勝手を振りかざすべきではないし、
揚げ足をとったり、足を引っ張り合ったり場合ではありません!
いま必要なのは、忍耐、協力、連帯、思いやり、優しさです。
私自身も医療者のはしくれとして、こんな状況で社会に何ができるのか、
正解はわかりませんが、日々考え続けたいと思っています。