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ニューヨーク州の抗体検査で約14%に陽性反応!

 

 


こんにちは。

北原LSC総合診療科の和田吉生(わだよしき)です。

金曜日のニュースになりますので、ご存知の方も多いかと。
私にとっては、なかなかショッキングなニュースでした。

 NY州の抗体検査で14%に陽性反応
 公式統計上回る感染率(CNN.co.jp)

NY州の住民3000人を対象にランダムに抗体検査をした結果、
13.9%に陽性反応が出たという発表がなされました。
NY市内に限ると、なんと21%の陽性率だったとのこと。
統計学的には3000人規模のデータが集まれば、
およそ母集団全体を把握するには十分なデータと言えます。
NY州の人口が約2000万人、NY市は840万人とのことなので、
NY州全体では約270万人、NY市だけでも約180万人が、
すでにSARS-CoV-2に感染している計算になります。
つまり、検査で感染が把握できている人々は氷山の一角で、
このウイルスに感染しても無症状だったり軽く済んでいる人が、
想像以上に大勢いるということが示唆されるわけです。

こういった検査は、ぜひ日本でもやって頂きたいと思います。
布マスクの配布に100億円近いお金を費やしている場合ではなく、
本来、国や各都道府県がやるべき仕事は、この全体の把握です。
現在、厚労省や日本赤十字社が同様の抗体検査を計画中で、
来月には実施されるようですが、その結果が待ち遠しいです。

ご存知の通り、日本はPCR検査数が思いのほか増えておらず、
症状の出ている感染者でさえ、的確に把握できていない状況です。
ましてや無症状の感染者は、ほとんど野放しの状況と思われます。
(感染者のクラスター把握で無症状の濃厚接触者は検知されます)
もしNY州と同じように、東京で10%、つまり100万人以上の人が、
すでにSARS-CoV-2の抗体を保持しているのだとしたら、
COVID-19による致死率は計算上0.01%程度となり、
インフルエンザとさして変わらないウイルスとなります。
抗体検査で全体の状況が分かると、対策が変わる可能性があります。

ここからはやや小難しい話になりますが、ご容赦下さい。
SARS-CoV-2の基本再生産数R0(1人が何人にうつすかの指標)は、
今のところ1.5~3.5程度(つまり1人が2~3人にうつす程度)と
考えられており、仮にR0が2.5として計算すると、
国民のおよそ60~70%が抗体を保持することになれば、
それ以上は国内で感染が拡大しにくい状況になります。
これを「集団免疫」と言います。昨今、メディアでも出てますね。
つまり、多くの人は抗体を持っているから、そもそもかからないし、
まだ抗体を持っていない人も周りの人たちによって守られるわけです。
毎年のインフルエンザも、この集団免疫の考え方が採用されています。
ただ、ワクチンがない状況下で、自然に感染が拡がることで得られる
集団免疫には、残念ながら多くの人々の犠牲が伴います。
その意味でも、ワクチンが先か自然な集団免疫の獲得が先か、
いま世界はまさにそういう状況になってしまっているということです。

そして実は、ことはもう少し複雑な可能性があります。
つまり「抗体保持=かからない」と言えるの?という問題です。
ここでもインフルエンザを想像して頂くと分かりやすいと思います。
毎年、インフルエンザの予防接種をきちんとなさっている人でも、
かかる人はインフルエンザにかかってしまいますよね。
また、昨年かかったから今年かからないということでもないですね。
つまり、今、SARS-CoV-2の抗体を保持している人は、
少なくとも知らぬ間に感染してしまったのは間違いないのですが、
では今後もう2度とかからないかは、まだ分からないわけです。
もし、このウイルスがインフルエンザと同じように、
毎年冬になると流行するようなウイルスになってしまうとすると、
やはり、ワクチンや治療薬の開発を待つしかないのかもしれません。

人類は、なかなか厄介な相手を敵に回してしまったようです。


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