こんにちは。
北原LSC総合診療科の和田吉生(わだよしき)です。
今日は少し毛色を変えて、学問的なお話をします。
少々難しいかもしれませんが、ご興味ある方、どうぞご一読を。
以下の文章と右の図は、以下の記事から引用させて頂いております。
Gene sleuths are tracking the coronavirus outbreak as it happens.
Genetic data shows that countries are getting hit
with multiple introductions of the virus.
by Antonio Regalado, MIT Tech Review, March 4, 2020.
ウイルス学の分野では、感染拡大に伴う遺伝子変異を追跡することで、
ほぼリアルタイムにSARS-CoV-2の系統樹が作成されています。
この系統樹は、感染が国から国へ飛び火する状況の特定に役立ちます。
人間でいうところの家系図みたいなもので、由来が分かるわけですね。
ご興味のある方は、Nextstrainという以下のサイトをご覧下さい。
世界各国の言語で解説されており(もちろん日本語もあります)
SARS-Cov-2の遺伝子の変遷を詳細に追跡することが可能です。
例えばブラジルでは、2月下旬にCOVID-19の国内初発例を確認した際、
すぐに感染者のウイルス遺伝子配列を解読して、
ウェブ上に公開されていたSARS-Cov-2のデータと照合しました。
感染者は2月にイタリア・ロンバルディア地方を旅行していましたが、
このウイルス自体は、中国からドイツに侵入しており、
1月のミュンヘンでのアウトブレイクに関連しているだけでなく、
イタリアでの感染拡大にも関連していることが示唆されました。
遺伝子追跡は、封じ込め政策の成功・失敗を知るのにも有効です。
封じ込め成功例と考えられている1月のミュンヘンアウトブレイクは、
実際には封じ込めに失敗した可能性があることが示されています。
メキシコやイタリア、ブラジルなどで確認されたウイルスが、
ミュンヘンのクラスターに遺伝的に類似していることが分かりました。
このウイルス自体は、中国からドイツに侵入しており、
1月のミュンヘンでのアウトブレイクに関連しているだけでなく、
イタリアでの感染拡大にも関連していることが示唆されました。
クラスターが特定され、一見封じ込められたように見えても、
感染連鎖の発生源になる可能性は完全には否定できないという、
極めて重要な学びが得られたわけです。
日本はいつまでもクラスター封じ込めに固執していてはいけません。
東京の医療崩壊はすでに非常に深刻な状況に陥っており、
早急かつ柔軟な対応の変更が求められる時期にとうに入っています。
軽症者でも要入院とか、PCR2回連続陰性までは退院不可とか、
医学的根拠に乏しいルールはすぐにでも見直すべきです。
医療現場だけの努力では、どうにもならない状況です。
医療、行政、市民の皆様、全体の連帯と協力が不可欠です。